1.牛深ハイヤ節(4’25”) 2.チョンガレ(4’20”) ---------- 町田市立鶴川第二中学校の委嘱により2018?2019年のNHK全国学校音楽コンクールにおいて演奏された 「牛深ハイヤ節」(熊本県天草市)「チョンガレ」(富山県砺波市など)の2曲。 いずれも地元を代表する民謡・踊りである。ともに合唱に手拍子やボディーパーカッションを加えた、聴覚的にも視覚的にも派手な音楽で、コンクール自由曲にも最適である。 グレード:中〜上級 演奏時間:約9分
<まえがき> 私のライフワークである、『日本固有の音素材の、合唱音楽への投影』のカテゴリーの中心をなす『日本の民謡』シリーズであるが、今回の第9集は、2つの『踊り歌』によって構成されている。熊本県牛深に伝わる『牛深ハイヤ節』と富山県砺波に伝わる『チョンガレ(千音加礼)』である。 どちらの曲も、東京都町田市立鶴川第二中学校合唱部の委嘱による。中学校とはいえ、全国優勝レベルの表現力は、私に妥協のない音群を置かせるに十分なものであったので、ボディーパーカッションを含め、かなりアグレッシヴな合唱作品に仕上がったと思っている。
《牛深ハイヤ節》江戸時代後期から熊本県天草市牛深に伝えられている民謡である。天草市の最南端に位置する牛深は、穏やかで、古くから九州各地への中継基地として船の往来が盛んな、県下最大の漁業の街であり、多くの船乗りたちで賑わっていた地である。そんな船乗りたちをもてなすために地元の女性たちが唄ったことが、牛深ハイヤ節の起源と言われているこの曲も、躍動感あふれる踊りがついている。北海道から沖縄まで、この曲のような付点のリズムの民謡が数多く存在するが、これは海洋民的なスイングのリズムであり、波を超えていく軽快さを持っている。この、漁労民的、海洋民的な独特のリズムは、「ハイヤ節系」とよばれ、その起源がこの曲、牛深ハイヤ節だと言われているのである。牛深発祥の民謡の形が全国に広まったのは、北前船の船乗りたちによって、寄港地で歌われたからだと言われている。新潟の「佐渡おけさ」、青森の「津軽あいや節」、鹿児島の「ハンヤ節」、奄美の「六調(ろくちょう)」など、ハイヤ節系の曲は我が国に数多く存在するのである。 《チョンガレ(千音加礼)》富山県の砺波地方、南砺市井波の高瀬神社に伝わる盆踊り歌である。砺波地方では、盆になると夜になれば村の氏神様の境内で盆踊りが盛大に行われた。踊りは時代の様子を反映していろいろと変化していったが、砺波地方では以前から「チョンガレ」が唄われ踊られてきた。リズミカルで、魅力的な動きの踊りに合わせる唄の歌詞には、「目蓮尊者」「石山合戦」「八百屋お七」「鈴木主人」「平井権八」などさまざまなバージョンがあり、唄い手はその美声を神社の杜に夜明け近くまで響かせたそうである。(松下 耕)
松下耕
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