1. メヌエット (3’30”) 2. 晩春 (4’45”) 3. 歌ひとつ (3’45”) ---------- 2016年10月16日、新潟で行われた「歌う仲間のコンサート 2016」にて全曲初演。 新潟の合唱指揮者で2022年1月に亡くなられた田辺伸五郎氏の依頼で作曲した女声合唱組曲。古典的でシンプルであるがメロディーラインは美しく、おかあさんコーラスにふさわしい女声三部合唱作品。全3曲。 グレード:初?中級 演奏時間:約12分 <まえがき> この組曲は、2022年に亡くなられた田辺伸五郎先生との思い出の詰まった作品です。生前、新潟市西蒲区巻地区(旧巻町)を拠点に合唱指揮者として活動されていた田辺先生は、さまざまな作曲家の方々に精力的に合唱曲などの音楽作品を委嘱していらっしゃいました。私は2004年ごろから先生のお宅にお邪魔するようになり、委嘱活動の苦労話なども含めいろいろな興味深いお話を聞かせていただいたり、先生が企画するコンサートに時々参加したりしていました。 そのような交流の中で、2015年の「歌う仲間のコンサート」のために夭逝の詩人立原道造の「メヌエット」により合唱曲を作曲することになりました。「アルカディア合唱団」と「吉田フラウエンコール」が合同で初演してくださり、その後、田辺先生はこれを含む組曲を作るよう勧めてくださいました。 立原道造は詩人としてだけではなく建築家としても嘱望された存在でしたが、結核によって24歳8か月という若さでその生涯を閉じました。日本が戦争へと大きく傾いていく時期に、晩年の彼が健康状態への不安を抱えながら、残された生をどのように燃え上がらせていったのか考えるうちに、「晩春」、「歌ひとつ」を加えることを思い立ちました。 透明な色彩を帯びた美しい「メヌエット」には、婚約者との新しい生活への希望が込められているのでしょう。「晩春」では一日の終わりの薄暗さを背景に絶望感が吐き出されますが、その現実から飛翔しようとする詩人の姿を「歌ひとつ」の中に見出すことができましょう。病におかされながらも激しく「うた」を求め、死と深く向き合いながら「生」を求める詩人の姿を表現しようと念じながら作曲を進めました。 2016年の「歌う仲間のコンサート」では全曲が演奏され、私にとってたいへんな励みになりました。このたび先生の三回忌を目前に出版の運びとなりましたことをたいへんありがたく思います。(松崎泰治)
松崎泰治
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