1. 終止線 (3’40”) 2. 母さん (4’00”) 3. いきよう (3’40”) 4. しずかなる星 (4’50”) ---------- 2022年3月5日、東京都立大学グリークラブ第65回定期演奏会委嘱初演作品。OBと現役学生との合同演奏によるもの。いのちの尊さを思わせる詩とその詩に合った様々な音楽とともに、温かみのある終曲へと展開されている作品。無伴奏男声ならではの重厚感がにじみ出ている。全4曲。 グレード:中級 演奏時間:約16分10秒 <まえがき> きむらえいりさんのInstagramに発表されていた「しずかなる星」の詩を読んで、すぐに「合唱曲にしたい」と連絡を入れました。図らずも、東京都立大学グリークラブ・同OB会からの委嘱と時期が重なり「ア・カペラで難解でない作品を」という要望との共鳴も感じた私は、きむらえいりさんに「しずかなる星」を軸とした作詩の依頼をし、この曲集のテキストが出来上がったのです。 全体の詩は、死を目の当たりにした者の生き様、特に死生観を考える色が強いものです。しかし、作曲にあたっては深刻になりすぎず、飽くまで歌としての存在感を第一に考えました。また、ホモフォニック(和音主体)且つ、ロマン派前期までの和声語法を核にするものとし、両腕で抱えられるような、大きくなく纏まったサイズ感を意識しました。あくまで旋律として、ハーモニーとしての包容力と安心感を作曲上の主軸にしています。 以下、各楽曲の作曲上のメモを付記します。 1. 終止線 多くの即興的場面転換、和声的不安定且つドラマチックな展開を有するが、それらの全ては「死とはそういうものであってほしい」に収束する。 2. 母さん ドラマティックな旋律にメッセージ性を強く持たせた楽曲。大局的にA-B-A-Cの二部形式で構成され、全体がハ短調の深刻な響きの中で、Bのト長調、Cの変ホ長調が彩りを添える。 3. いきよう 「生きよう」とも「生き様」も捉えることができる表題。この楽曲のみポリフォニックな書法の作曲を試みており、それは2つの短歌それぞれに旋律を与え、モノフォニーからの和声的充実が徐々に展開されるものである。 4. しずかなる星 小さなレクイエム。 この曲集の中の最も重要な作品であることは言うまでもないが、最もシンプルな作品でありたいと願った。
初演は、繊細、巧緻で内省的な表現と、大きなスケールが共存した感動的なものでした。また、その後も既に何度も再演をしてくださりこの曲を世に紹介してくださっている、東京都立大学グリークラブの現役生、OBの皆さん、そして初演指揮だけでなく今回の曲の誕生を常にリードしてくださった金川明裕先生に、この場を借りて御礼申し上げます。(相澤直人)
相澤直人
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