1. Vocalise (2’00”) 2. 音楽の木 (6’00”) ---------- 第46回全国高等学校総合文化祭東京大会〈とうきょう総文2022〉において、東京都の合唱部の高校生が集まる「東京合同合唱団」によって初演された。 「Vocalise」と「音楽の木」の2曲から成る。詩の世界に寄り添うように静謐な音からはじまり、次第に推進力を持ちながら空間がひろがるような展開となっている。情感豊かなコラールがとても魅力的な混声合唱作品。 グレード:中級 演奏時間:約8分 <まえがき> 2022年8月に東京芸術劇場コンサートホールにて開催された『とうきょう総文2022』合唱部門。東京都合同合唱団のステージのために書き下ろしたのが、この「Vocalise」・「音楽の木」だった。同年春に勃発したロシア―ウクライナの戦争に関するニュースが世の中を席巻し、コロナ禍の閉鎖的な社会気運も重なっていた頃であったが、その中にあって高校生たちが集い命を吹き込む音楽にはどのようなテキストが相応しいのか、具体的にどのような音を紡ぐのが私にとっての“自然”であるのか、思いを巡らせながら作品の構想を練った。 私はここ何年か、和合亮一の詩集『木にたずねよ』の世界に惹かれ、これまでに何作かの合唱曲を書いてきたが、今回の構想を練る中でこの詩集を何度も読み返し、そして「音楽の木」という詩に、幾度も目が留まった。“今”と呼応する何かを感じた。静けさと向き合い、内観し、透明な悲しみのようなものの先にある光の世界──詩に感化されながら湧き起こるそんなイメージを聴き、音を紡いでいった──。 高校生という、いわば“今”しかない透明な美しさに満ちた音色をもって命が吹き込まれた初演は、瑞々しさに溢れ、まるで命が輝いているかのようだった。“生”に触れた時間であったからこそ、死というものを思惟する時間でもあった(そういえばこの曲を書いている間、レクイエムのような感情がいつも湧き起こっていた)。初演の機を与えてくださり、瑞々しい音楽の木を生み出してくださった、指揮の井上雅文先生、ピアノの難波祐子先生、東京都合同合唱団の皆さんに、この場をお借りして改めて感謝申し上げたい。(三宅悠太)
三宅悠太
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