かもめ (4’20"") ---------- 2021年3月、神奈川の湘南高校合唱部(指揮=岩本達明)による委嘱初演作品。詩は『千鶴さんの脚』所収。 四元康祐が撮った写真から高階杞一がインスピレーションを受けて書いた現代詩。女性の心の機微を綴った詩である。 前半は現代音楽的な響きから、後半は広がりあるメロディックな世界へとつながり、変化に富んだ曲想である。 コンクールの自由曲としても歌われたが、大人世代が演奏しても曲に奥行きが生まれるだろう。 グレード:中級 演奏時間:約4分20秒
<まえがき> 神奈川県立湘南高校合唱部の委嘱作品として2021年春に作曲。現代詩的なレトリックが施された高階杞一氏のテキストに接し、湧き起こる音楽の律動は自分にとって新しいものであった。描写される主人公の心情と全体に満ちる高い緊張感は音楽にも多分に反映され、また、岩本達明先生指揮の湘南高校合唱部が生み出す柔軟性や躍動感、瑞々しさのイメージは、作曲上の大きなインスピレーションとなった。結果的には無調的でリズミカルな楽想と調性的で旋律的な楽想とがダイナミックに展開されていく構成となり、ピアノパートは音楽の質感と共に緊張感の推移やベクトル、コントラストを描いてゆく重要な役割を担っている。 コロナ禍で合唱現場は諸々困難を極めている時期であったが、初演の演奏会、そして2年ぶりの開催となったコンクールに際し溢れんばかりのエネルギーで命を吹き込んでくださった、湘南高校合唱部の皆さん、指揮の岩本達明先生、ピアニストの織田祥代さんに、改めて御礼を申し上げたい。(三宅悠太)
三宅悠太
|