1. 石けり (1’47”) 2. のぞいて見たら (3’06”) 3. 指切りしたあと (2’46”) 4. 遠くて近い (3’08”) 5. あそこのかどから (3’27”) ---------- 「女声合唱のための昭和ノスタルジー」第2弾。少しずつ忘れ去られてゆく昭和の風景。子供の目線によって、その時代の遊びや情景を描いた、懐かしくも楽しく、易しく歌える二部合唱曲。穏やかで温かみのある昭和の近所の風景が、ほのぼの感じられる曲集。全5曲。 グレード:初級 演奏時間:約14分
<まえがき> 叔父である小野興二郎(1935年〜2007年)は、46歳の働き盛りに医療事故で視力の多くを失いながらも生涯創作を続けた歌人であった。 私と興二郎との童謡制作は、バブルが崩壊した1991年から翌年にかけて原曲となる33曲を作曲し、20年後の2011年東日本大震災の年から翌年にかけて改訂版を作り、さらに10年後2021年にコロナ禍の中で再改訂版が出来あがっている。興二郎の他界をはさんで、振り返れば日本にとって歴史を画する重大な時期にこれらの曲を生み育ててきたことになる。 その間に独唱版としてソプラノの吉岡あき子氏、洞口晶子氏、合唱版としてはリーダークライスの皆さんに演奏していただき、2018年にはカワイ出版から『女声合唱のための昭和ノスタルジー 花びらあそび』全5曲を上梓することができた。 今回続編としてこの曲集を編むきっかけになったのは、札幌在住のソプラノ一鐵久美子氏との出会いによるところが大きい。氏の幼なじみでソプラノの針生美智子氏との息のあったデュエットと石橋克史氏の端正なピアノは、この曲集誕生に美しい花を添えて下さった。 『花びらあそび』と同様、二部合唱だけでなく重唱やソプラノパートのみで歌う独唱曲として活用すれば、コンサートプログラムはより豊かになるに違いない。歌を支えるピアノパートもオーケストラのように多彩な音色を工夫しつつ、歌と拮抗したアンサンブルを楽しんで頂きたい。ソロで歌う時とデュエットで歌う時、また合唱とでは同じ曲であっても世界が違うことを感じながら、それぞれの魅力を追求し活用の幅を広げてほしい。
「石けり」 片足で跳ぶような付点のリズムを心地よく感じながら、のんびりした曲調を表現するように。「あした天気に…」は伸びやかな声で。フェルマータの「間」も放物線を目で追うイメージが大切である。二部合唱(二重唱)は2つのパートが個性を主張しながら一体となるところに面白さが生まれる。道端のどこにでも蹴る石が転がっていた時代が懐かしい。 「のぞいて見たら」 柔軟なテンポルバートと強弱変化はメロディーをより生き生きとさせるだろう。また長いフレーズを歌おうとする時には、ブレス前の踏ん張りが大切となる。ピアノパートは適度に自己主張しながら内声に込められた陰影も表現してほしい。 「指切りしたあと」 素早いリズムに乗り遅れないように。中間部ではアルトパートの存在感を示しながら、掛け合いの面白さを表現してほしい。 最後のページではフェルマータの間合いとテンポの緩急が音楽を決める要素となる。この時、指揮者の背中の表情も音楽的であるように。 それぞれの“指切り”に違った思いを込めながら、聴き手の心に食い込んでほしい。 「遠くて近い」 “遠くて近いものなあに?”というなぞかけは、歌い進んでいくうちに郷愁や人生の歩みに迫っていく。同じメロディーでも歌詞によってさまざまな色がつき、明暗とともに表現を深めていく。長く伸びる音にこそ表情の変化を与えながら、聴く者を引きつけるように。 「あそこのかどから」 3拍子の1拍目を常に意識して、明瞭な言葉を発する口の形を準備すること。オルゴールのメロディーが、主人公の想いと重なっていく場面の作り方がカギとなる。 『私のお気に入り』(サウンド・オブ・ミュージック)をどこかで意識したのも、昭和の時代を懐かしんでのことである。
映画『ALWAYS三丁目の夕日』に描かれたような戦後の都会の風景とともに、作詞者が生まれ少年時代を過ごした愛媛県上浮穴郡面河村(現 久万高原町)の田舎の風景を想像しながら、味わっていただければ幸いである。(源田俊一郎)
源田俊一郎
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