1. 未明の声 (6’15”) 2. 海が満ちてくるとき (5’00”) 3. 光のかたち (8’00”) ---------- 2019年3月、「田中達也合唱作品個展-光のかたち-」にて委嘱初演(合唱:アンサンブル・ヴォカル・アルカイク=東京、合唱団わをん)。現代社会の闇の中で光を見出そうとする人間の姿と、そのはざまで変わらない自然の姿が描かれている。1曲目と3曲目はピアノ連弾伴奏、2曲目は無伴奏混声6部という作曲者の作風の中では挑戦的な編成の作品。連弾にすることでスケールの大きさが、より感じられる。全3曲。 グレード:中級 演奏時間:約19分15秒
<まえがき> この作品は、2019年3月に開催の「田中達也合唱作品個展−光のかたち−」にて委嘱・初演されました。すべてが自作品による初の演奏会、その最終ステージで演奏される作品ということで、いま書きたいものを書こうという思いのなか、あえて自分が書いてこなかった編成に挑戦してみました。テキストは仙台在住の詩人・原田勇男さんの詩作から3編を選んでいます。この詩が内包する大きなエネルギーと言葉の強さに向かい合い、ぜひ音にしたいという気持ちがありました。
以下、初演時のプログラム・ノートから引用します。 …ピアノ連弾という編成のもつ運動性や、垂直的な響きの多様性を念頭にテキストを探していたところ、まず目にとまったのは意外にも第2曲「海が満ちてくるとき」の詩でした。そこから1曲目と3曲目の対照的なモチーフをもつ詩にたどり着いたのですが、(詩が書かれた当時の)現代の社会へ対峙していこうという詩人の思いが、折しもこの曲を書こうとしているときの、まさに「現代」の状況と似ているのではないか、とも思いました。それは時に「閉塞感」といった言葉で語られることもあります。それを打ち破ることも必要とされるときがありますが、「個」の時代だからこそ、実は自分だけの「光」を見つけることにも意味を見いだせるのではないか……と感じています。私にとっても、この作品を作曲することが自分なりの光を見つけることであったかもしれません。(田中達也合唱作品個展−光のかたち− パンフレットより引用) 第1曲「未明の声」で提示されたいくつかのモチーフは、対照的な第3曲「光のかたち」において、姿を変えて(長調の形で)再現されます。これは闇の中から光を見いだそうとする心の動きでもあり、第3曲の終結部で流れ続ける「うた」は、ある意味で私自身が求めた救いであり、祈りであるのかもしれません。 初演は原田さんも仙台から駆けつけてくださり、アンサンブル・ヴォカル・アルカイク=東京と合唱団わをんの仲間たち、指揮の野本立人さん、ピアノの松元博志さん、前田勝則さんのもとで素晴らしいものとなりました(私も合唱団員として参加しています)。本当にありがとうございます。また、2020年2月末、少しずつ厳しさを増す情勢のなかで無観客ながら感動的な再演を成し遂げてくださった三重大学合唱団のみなさんに感謝いたします。
なお、初演の音源を私のYouTubeチャンネルで聴くことができます。 https://www.youtube.com/user/tanakasfactory (田中達也)
田中達也
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