1. ことばのとおりに (2’30”) 2. 愛が消える (2’00”) 3. 影と海 (2’40”) 4. たったいま (3’15”) 5. こころの色 (3’20”) ---------- 2022年1月23日、三重県の津女声合唱団創立50周年記念演奏会での委嘱初演作品。タイトルは谷川俊太郎の命名による。 コロナ禍で人との距離が出来てしまい、自分の居場所も見失いかけることもあるのではないか。そのように下をうつむいてしまいがちな時だからこそ、前を向き希望をつないでいきたい、という思いを込めて出来た作品。おかあさんコーラス向けの合唱作品。全5曲。 グレード:初級 演奏時間:約14分 <まえがき> 谷川俊太郎さんの詩集「すこやかに おだやかに しなやかに」の巻頭から5番目まで、5つの詩をそっくりテキストに、津女声合唱団の50周年記念作品として組曲にまとめました。 表題「ほんとのあなた ほんとの私」は、谷川さんにお願いして、この組曲のために附けていただいたものです。 作曲のお話をいただいた折、指揮者・馬場浩子さんからの注文は、なるべく平易で、親しみやすい、短めの曲を集めたものに。日々深刻さを増す疫病禍、みんなこぞっての練習がますます難しくなることを見越しての、リクエストだったのでしょう。 にくき感染症の拡大は、「あなた」と「私」の距離を否応なく割き、あなたにとっての私、私にとってのあなたという、だいじな関係を徐々に希薄なものにしました。いつもそばにいたあなたがいない。これまで、人とのつながりのなかで、己の座標を確認してきた私たちにとって、あなたを見失うこと、それはすなわち、自分自身を見失うことだったのです。 不自由を強いられ続け、ふれあうことのできない辛さ、淋しさ。合唱団という共同体にいるみなさんこそ、それをひしひしと感じられる毎日ではなかったでしょうか。 そんな嘆息に暮れるしかない私たちに、谷川さんの言葉は、優しく諭し、問いかけます。 …ほんとのあなた、ほんとの私は、いまどこにいますか? …ほら、ちゃんと。ここに。 はからずも苦難の時代を背負いこんでしまい、あなたも私もうつむきかけてしまった<いま>だからこそ、屹立と前を向く<ほんとの>自分を見つめ、希望をつないでいきたい。あなたたちといつまでもつながっていたい。そんな思いを込めて、私はていねいに音を紡ぎました。 オミクロン株が猛威をふるう第六波渦中での記念演奏会になってしまいました。最悪のコンディションをものともしない、津女声合唱団のみなさんの、熱のこもった明るい歌声は、いつまでも私の心に響いています。(伴 剛一)
伴剛一
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