紫 (4’00"") ---------- 2021年5月1日、清水雅彦指揮によるChorus ST委嘱作品。未来に希望をつなげるような合唱曲を委嘱したい、という思いから出来た3部作の1曲。色彩になぞらえられた人間の苦悩を、3小節単位という珍しいフレーズ感を用いて表現した大人向けの作品。混声四部合唱作品(ピアノ伴奏付き)。 グレード:中級 演奏時間:約4分 <まえがき> 混声合唱団「Chorus ST」の創立30周年記念演奏会のために書き下ろした作品です。 本来は文字どおり30周年となる2020年の5月に初演予定でしたが、残念ながらコロナウイルス禍のために延期となり、翌21年に、演奏会ではなく動画公開収録会という形で初演されました。 合唱指揮者の清水雅彦氏の知己である詩人のフルリーナさんに何篇かの詩を書き下ろしてもらい、それをChorus STと関わりのある作曲家たちの連作によって構成しようという試みでした。私は古くからChorus STの一団員として、いまでも歌い続けていますが、そのほかに以前ピアノ伴奏者として共演して貰った山下祐加さん、そして清水さんの不在中にしばらく指揮を担当して貰ったことのある相澤直人さんが加わり、三人の競作となったわけです。 同じ詩人の作品に作曲したことで、それぞれの作曲家の持ち味が際立ち、たいへん興味深いステージとなりました。この三曲は「フルリーナの詩による三つの混声合唱曲」というシリーズで同時刊行されておりますので、ぜひお手に取ってご覧ください。 フルリーナさんの詩の中で、私が選んだのは、「紫」という作品でした。 紫という色は、赤と青を混ぜると出来上がるということは誰でも知っていますが、逆に「赤にも青にもなりきれない色」というとらえかたもでき、それが何か人生というものの寓意にもなっているような気がして、読んですぐに気に入りました。 曲想も、どこかやるせない、憂鬱な気持ちを訴えかけるような雰囲気になっています。 演奏にあたっては、フレーズが3小節単位になっている部分が大半を占めていることにご注意ください。2小節単位のフレーズの持つ明快さに対して、満たされぬ想いといったものを表現するために、こういう手法を採ってみました。 小品ではありますが、多くのかたがたに歌っていただければ幸いです。(猪間道明)
猪間道明
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