1. 狩俣ぬくいちゃ(宮古島の民謡/無伴奏) (4’10”) 2. 音戸の舟唄(広島県民謡/ピアノ伴奏付き) (4’15”) 3. 湯かむり唄(鳥取県民謡/無伴奏) (3’10”) ---------- 松下耕のライフワークである、合唱のためのコンポジション「日本の民謡」シリーズ。第8集は混声合唱として別々の曲集に収録されていた3曲を女声合唱にアレンジし、まとめたもの。快活で華やかな宮古島民謡「狩俣ぬくいちゃ」と鳥取県民謡「湯かむり唄」の間に朗々とした広島県民謡「音戸の舟唄」を配した、極めて高い演奏効果をもつ3曲で、ステージングにも効果的な曲集となっている。 グレード:中〜上級 演奏時間:約12分 <まえがき> この曲集に収められている曲は、どれも以前に混声合唱曲として発表されたものの、女声合唱用へのトランスクリプションである。私にとって、どの曲も思い入れの深い曲であるから、こうして女声合唱版として出版されたことを大変嬉しく思っている。 《狩俣ぬくいちゃ》宮古島の祭り歌。くいちゃ(クイチャー)とは、声を合わせて歌うという意味があり、集団舞踊を伴って、民衆の生活の場で歌われていた民謡である。狩俣とは村の名(2022年現在は宮古島市平良狩俣)で、狩俣村をほめた内容となっている。この曲の原旋律の持つ躍動感、絶妙のタイミングで挿入される変拍子、歌の拍子とポリリズムをなす手拍子など、この曲には独特の魅力が詰まっている。混声版の発表以来、諸外国の多くの合唱団にも歌われてきた曲である。 《音戸の舟唄》広島県の呉市と、瀬戸内海に浮かぶ倉橋島の間には、幅の狭いところでは70メートルほどの瀬戸(陸地に挟まれた、幅の狭い海峡のこと)がある。ここが、『音戸の瀬戸』といわれる名所なのである。多くの舟がこの瀬戸を利用するのだが、ここは、潮の満ち干きにより急流となり、舟は艪を漕いで乗り切るのが大変難しく、船頭泣かせの難所だったようで、その、舟と船頭の姿を歌ったのがこの民謡である。 この曲集では、この曲のみピアノ伴奏と共に演奏する。この曲の冒頭には、海鳥や波の音を口で模した表現を付け加えると、とても楽しいステージになろう。 《湯かむり唄》これは珍しい、温泉につかりながら歌われる民謡である。鳥取県岩美町にある岩井温泉に、江戸時代から伝わる独特の風習で、頭に手ぬぐいを乗せ、柄杓で湯をたたきながらうたう、リズミカルな歌である。海洋民的な付点のリズムが、水にまつわる場所という点で共通する、温泉の民謡に現れているのも注目である。曲の終盤、ボディーパーカッションが入るが、これはピシャピシャと音を立てる湯の様子を表している。合唱団の並び方などを工夫されて、楽しいステージにしていただきたいと思う。 この曲は、「Song of Spa」として、諸外国でも歌われてきた。女声版を委嘱してくださったのも、アメリカのアイオワ州立大学の女声合唱団である。(松下 耕)
松下耕
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