1. 潮来音頭幻想 (3’15”) 2. 常磐炭鉱節 (2’50”) 3. さあさあれ見な 筑波見な (4’45”) 4. 網のし唄 (3’45”) ---------- 松下 耕作曲による「日本の民謡シリーズ」第6集は、茨城県に伝わる民謡をフィーチャーしたもの。歴史のある茨城県は民謡の宝庫でもあり、その保存や発信にも積極的に取り組んでいる。その囃し言葉から、別名「ションガイ節」とも呼ばれる「潮来音頭」をモチーフとした『潮来音頭幻想』、筑豊の「炭坑節」と並び称される『常磐炭鉱節』、情緒あふれる子守唄『さあさあれ見な 筑波見な』、活気に満ちた労働歌『網のし唄』の全4曲。このシリーズの中では演奏容易である。 グレード:中級 演奏時間:約16分
<まえがき> 私は、『日本の民俗音楽の合唱曲への投影』を、作曲活動の根幹の一つの大きな柱に位置づけているが、この作品も、私の大切な仕事の分野に位置するものである。 この『第6集』は、茨城県の県南地域に位置する龍ヶ崎市で活動している、竜ヶ崎混声合唱団の委嘱により2008年に作曲したものである。合唱団と、指揮者の安達陽一さんから、茨城県の民謡を合唱曲に、というご依頼があったので、まず茨城県の民謡を収集するところからこの曲の作曲活動が始まった。作業開始から初演の日まで、とても楽しく充実した時間を過ごさせていただいた。そして、作曲から実に13年の歳月を経て、こうして出版していただけることになった。喜びも一入である。 この『第6集』の特徴は、どの曲も『どこかで聞いた』ことのある旋律を持っていて、懐かしさを感じる民謡を集めたということ、難易度は極力平易に抑えて、多くの方々に楽しんでもらえるように工夫したこと、曲集中3曲は和楽器を入れて、楽器の音色、リズムも楽しめるようにしたこと、等である。どうかリラックスして、日本の民俗音楽を楽しんでいただければと願っている。 曲を書かせてくださった、竜ヶ崎混声合唱団の皆さん、指揮の安達陽一さんに、心から感謝申し上げる次第である。 ●潮来音頭幻想 歌詞の最後に「しょんがいー」と合いの手を入れることから、『ションガイ節』とも呼ばれる民謡である。もとは潮来の町の妓楼で踊られていた『あやめ踊り』の伴奏として歌われていたものらしい。遊郭の隆盛と悲哀を、私なりに表現したのがこの曲である。美しく、哀しみをもって表現されたい。 ●常磐炭坑節 19世紀後半に発掘された、福島県南部から、茨城県北部の常陸地域にまたがる大きな炭田、常磐炭鉱で働く男たちの唄である。 笛や鳴り物とともに、賑やかに、楽しく、男声部は少し荒々しく、女声パートは幾分艶やかに表現すると楽しいだろう。 ●さあさあれ見な 筑波見な 旋律は、日本各地に伝わる典型的な子守唄である。代表的なものは、『ねんねんころりよ、おころりよ』で知られる『江戸子守唄』である。一方、詩の内容は、非常に穏健な『寝させ唄』であり、茨城のご当地子守唄ならではの、筑波山が登場する。 和音の豊かな響きを感じながら、たおやかな旋律を味わっていただきたい。 ●網のし唄 こちらも、常磐炭坑節と同じく男たちの歌であるが、こちらの方はマグロ漁を終えた漁師たちが、次の漁に備えて網の目を締めた、その重労働に掛け声を掛けながら歌った唄である。常磐炭坑節は山の、網のし唄は海の民謡である。 勇壮に、明るく楽しく歌っていただきたい。(松下 耕)
松下耕
|