1. 平和の祈り (4’00”) 2. あなたへの祈り(4’00”) 3. 夜の祈り (2’40”) 4. 光の祈り (2’10”) 5. 微笑みの祈り (3’20”) ---------- ケルト・キリスト教のシンプルで素朴な祈りの言葉から5つ選び、日本語にしたものに作曲。自然や精霊を敬う人々の祈りの音楽。「平和の祈り」「あなたへの祈り」「夜の祈り」「光の祈り」「微笑みの祈り」の全5曲。女声三部合唱。 2020年12月、緑フラウエンコール「第12回演奏会」委嘱初演。 グレード:初〜中級 演奏時間:約16分10秒
<まえがき> 「ケルト」という言葉の魔法は根強いです。近代文明と合理主義の発達によって失われたものが息づく地、遥か極東の私達でさえなぜか不思議に懐かしさを覚える、神話と音楽と曲線的デザインと謎の宝庫・・・19世紀ヨーロッパの人々によって創られたイメージであるとわかっていてもなお、私達は「ケルト」に、大自然の不思議と共存する逞しさや生き抜く知恵を見ようとします。 「ケルト」が逞しく共存してきたのは大自然だけではありません。ヨーロッパに広く分布するケルト文化のうち、特に「島のケルト」と呼ばれるブリテン島とアイルランド島のケルトは、ローマ支配、続いてアングロ=サクソン、次々とやってくる新たな支配者に抵抗しながら、長い年月をかけて次第に文化融合していきました。これらの島々には今も謎の巨石遺構が数多く残されています。アイルランドには5世紀にキリスト教がもたらされ、それ以前の信仰(キリスト教世界から見れば「異教」)と融合したケルト・キリスト教が発達しました。円環と十字架を組み合わせた「ハイクロス」など、石の宗教文化とキリスト教が出会って生まれたさまざまな立石モニュメントは、融合の象徴であるとも言えるでしょう。キリスト教と土着の信仰の出会いは世界各地で見られますが、「ケルト」の魅力は、共存、融合という、現代の私達が直面するキーワードがひときわ輝いているように感じられるからかも知れません。 ケルト・キリスト教の祈りの言葉には、古代から連綿と続く、自然や、深く息づく霊的なものへの畏怖が根底に流れ、シンプルで素朴な言葉は「信じる力」と「他者への思いやり」に満ちています。近代社会の歯車の中で、ケルト・ブームという形を借りて、人々の心が追い求めてきたもの。今なお生き続ける心の文化遺産への敬意を込めて、文化・宗教を越えた人類普遍の5つの「祈り」を組ませて頂きました。祈りの言葉の原文は、『Essential Celtic Prayers』(Thomas McPHERSON 編 PARACLETE PRESS)に準拠しています。 この作品を委嘱初演して下さった緑フラウエンコール様の、洗練された、輝かしく品格ある音と、指揮者の松村努先生より示唆された「現代の宗教曲」というキーワードが、私をこの作品へと導いて下さったことに、心から感謝します。 これからこの作品に出会って下さる皆様への祈りを込めて。(なかにしあかね)
なかにしあかね
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