海水浴 (4’40”) ---------- 〈参考音源〉 指 揮 吉田 宏 ピアノ 岩本果子 合 唱 合唱団あたらよ
合唱コンクールの自由曲として歌いたいシリーズ「こどもコーラス・コレクションーシニアー」の第6弾。波のように穏やかなピアノと、神秘的な響きをもつコーラスとの融和が非常に美しい作品。「海」が様々な表情を見せてくるのもこの曲の魅力である。コンクールの自由曲向きの作品であり、初出場の学校にも取り組みやすい同声三部合唱曲。参考音源が視聴できるQRコード・合唱指揮者による演奏アドバイス付き。 グレード:中級 演奏時間:約4分40秒
<まえがき> 堀口大學は生涯にわたり多数のフランスの詩を日本語訳し、日本文学界に大きな影響を与えました。彼が若い頃に滞在した世界各地での経験と見聞は、国際的とも無境界とも表現出来る独特な作風からも伺い知ることができます。晩年は海沿いの町に腰を据えて余生を過ごしますが、身近だったはずの海についての詩作はあまり多くはなく、その中でも比較的易しい言葉で書かれているこの詩に付曲することとしました。 5つの連からなる、語りかけるような優しい文調の詩からは、波のような一定のたゆたうようなリズムを感じることができます。海の色の移ろいのように、一定の中にも変化があり、そして風景を切り取った絵画のように全体が一つにまとまるよう、旋法的なハーモニーの変化を意図的に配置しながら全体を構成しました。それぞれのパートを楽譜通りに正確に演奏することに注力するのではなく、少し遠くから視野を広く持って音楽を捉え、音の色彩の変化を時間の経過と共に感じながら演奏してもらえればと思います。 《海水浴》というタイトルから想像する光景はそれぞれだと思いますが、詩を読むにつれ、目の前に拡がる穏やかな風景や、体を優しくなぞる風や、まるでそこにいるかのような海辺の匂いを感じることができるでしょう。現代に生きる私たちは、詩作を通し、過去に生きていた作家からのメッセージを確かに受け取っているのかもしれませんね。過去と現代を繋ぐ詩人との無言の対話を感じつつ、作者の他作品を調べてみたり彼の人生について思いを馳せてみたり、皆さんの想像の羽を広げる一助となってくれれば幸いです。(松波千映子)
松波千映子
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