晴れた日に (3’40”) ---------- 合唱コンクールの自由曲として歌いたいシリーズ「こどもコーラス・コレクション−シニア−」の第1弾。 開放的で風通しのよいテキストは、心に瑞々しさを与えてくれる(詩集〈今日からはじまる〉より)。音楽は作曲家ならではの”疾走感・熱量”を持って、突き進んでいく。冒頭の印象的な旋律が終盤にも再現されるが、そこでは新しい景色が見えるよう設計され、全体像も秀逸な作品。 参考音源が試聴できるQRコード・演奏アドバイス付き。 グレード:中級 演奏時間:約3分40秒
〈参考音源〉 合 唱 女声アンサンブル八重桜(ソプラノ:對馬 香 アルト:瀬戸翔吾・富本泰成) ピアノ 清水 史 音源編集 富本泰成 <まえがき> コロナ禍で巣篭もり生活を強いられ淡々とした日々を送っていたとき、開放的なエネルギーに満ちたこの詩が私の心に直球で突き刺さりました。明るい詩を求めていたのです。作曲にあたってまずは歌の出だしのインスピレーションを得るべく、よく晴れた日を選んで荒川河川敷のとある大好きなスポットまで出かけてみました。燦々と照る太陽や爽やかな風を全身に浴び、流れゆく大河に身を任せるような感覚で大空や鉄橋を渡る列車、対岸の首都高などを独りぼんやりと眺めつつ詩と向き合っていると、いつの間にか【A】の旋律を何度も口ずさむようになっていました。 音楽は普通、静かなところ、盛り上がるところといったものが織り混ざって一曲が形成されますが、この曲では冒頭から一つ目の山場、すなわち盛り上がったところを迎えます。それは、早くあらゆる制約から解き放たれて自由になりたいという私自身の渇望の表現でもありました。是非とも、遠慮せずにしっかりと気持ちを入れて力強く歌い始めてほしいです。23小節目からは深呼吸の動作を取り入れていますが、歌っている途中で深呼吸ができる曲ってそうそうありませんよね? もしも緊張して思うように声が出せていなかったのなら、ここでしっかり気持ちを整えてください。そんな意図もあったのです。 中間部の【E】は詩においてもちょうど中間点にあたり、全体に明るく前向きな言葉が並ぶなか、「迷い」や「心を縮める」といったネガティブ・ワードが用いられた特徴的な部分となっています。しかしそれらは「青空へバウンドするため」というポジティブ・シンキングのために使われており、結局のところネガティブではありません。歌は音量は落としつつもそれまでの“熱量”は落とさない、と、言うは易く行うは難しではありますが、意識のなかに入れていただけたらと思っています。 先ほど曲の冒頭が一つ目の山場と述べましたが、二つ目の山場が【G】です。ここをなんとか【A】と同じ旋律にできないかと試行錯誤しながら音をあてはめていきました。音楽的にはいわゆる“再現部”と言えたりもしますが、エネルギーをさらに開放させて、そのまま最後まで駆け抜けて行ってください。 同声三部合唱ということで、主に子どもたちの伸びやかで明るい声をイメージしながら作曲していきましたが、世代を問わず、元気な気持ちになりたい全ての人へ、この曲を贈ります。(アベタカヒロ)
アベタカヒロ
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