序曲(ピアノ演奏のみ)(1’00”) 1. きみと ぼく (2’50”) 2. 海の向こうへ (3’30”) 3. きみを想う (2’40”) 4. 鐘が呼んでいる (1’40”) 5. 君の道はどこまでも (3’10”) ---------- 和歌山の御坊少年少女合唱団委嘱作品。2020年8月10日初演。イギリスの民話「ディック・ウィッティントンと猫」をもとにした作品。貧しい少年ディックの飼い猫が大活躍をし、ディックに富をもらたすという話。合唱にナレーションがついた軽い音楽劇スタイルで、ナレーションがなくても演奏が可能。易しい二部合唱なので、児童合唱団に限らず年齢層の高い合唱団も楽しく歌える作品。ピアノ演奏のみの序曲を加えた全6曲。 グレード:初級 演奏時間:約15分 <まえがき> ディック・ウィッティントン(Dick Whittington)のお話は、14世紀イギリスのリチャード・ウィッティントン卿をモデルとした民話です。貧しい孤独な少年だったディックが、唯一の財産であり友であった猫を海外貿易の船に託し、その猫がネズミの害に困っている外国で大活躍してディックに富をもたらします。富豪となったディックは、ロンドン市長を3期務め慈善活動にも力を注ぎ、国王にも信頼される人となった、というお話です。実在のウィッティントン卿の生涯には、ほとんど基づいていないと言われていますが、このお話は何百年もの間イギリスの子供達に大人気で、現在もパントマイムなどの題材として親しまれています。 民話の中でディックは富豪となって、雇い主であった豪商フィッツウォーレン家のお嬢様アリスと結婚します(実在のウィッティントン卿の妻の名もアリス・フィッツウォーレンです)。物語にはさまざまなバージョンがありますが、共通しているのは教会(St Mary-le-Bow教会と言われています)の鐘の音に呼び戻されるエピソードです。 このお話は、ディックの、ロンドンに出て行った勇気、大切な猫を冒険の旅に出した勇気、鐘の音に励まされて逃げ出したい気持ちに打ち勝った勇気、いろんな勇気のお話であると同時に、当時の階級社会の最下層にいる少年に、人格と正当な権利を認めてくれたフィッツウォーレン家の人々が可能にした、めぐりあわせの物語でもあります。猫以外何も持っていなかったディックは、実はとても豊かな目に見えないものをたくさん持っていたのだと思います。 物語組曲『ディックとねこ』は、御坊少年少女合唱団の子供達のために、この民話からいくつかの場面を選んで構成したものです。通常の合唱組曲として、あるいは各曲を単品として演奏しても良いですし、台詞やナレーションを作って挿入したり、演出をともなう舞台上演などなど、ご自由に上演素材としてお使い頂ければと思います(ご参考までに、ナレーション例を添付しております)。(なかにしあかね)
なかにしあかね
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