こころいき (3’35”) ---------- 2019年12月、「東京外国語大学混声合唱団コール・ソレイユ」第45回記念定期演奏会にて委嘱初演。静かにア・カペラから始まり、静かにヴォカリーズで終わる、生命力の素晴らしさをあらわした作品。若者への旅立ちの歌のようにも感じるが、世代を問わず歌える美しい混声四部合唱曲。 グレード:中級 演奏時間:約3分35秒 <まえがき> 木島始さんが亡くなられて2年後、私は木島さんの「発見のうた」に作曲させていただきたいと思い、奥様の小島光子さんにお手紙を出しました。そのご承諾とともに、送っていただいたのがこの「こころいき」でした。「このような詩があったので、歌になると良いと思って」ということばが添えられていました。 いただいたのはワープロで打たれた紙でしたので、その後いろいろ調べましたが、どの詩集に収められているのか、出版されているかどうかも残念ながら不明のままです。
この詩を手にしてから10年以上経ち、やっとこの詩に作曲する決心がつき、混声合唱曲というかたちになりました。木島始さんには四行詩が多いのですが、この詩は三行詩です。三行が九つ並んでいます。木島さんが生涯かけて大切に扱って来たことばたちが、そのひとつひとつの三行の塊に顔を出します。 「土」「枯葉」「根っこ」「空と風」「星」「鳥たち」「声」「花」「種」……。 ひとつひとつのことばを、そして、詩全体から立ち上る匂い、この詩からしか感じられないことばの手触りを届けたい、という思いで作曲しました。
木島始さんの詩と大道あやさんの絵による絵本「花のうた」の中に「こころいき」という題の詩があります。最後のふたつの詩が「ねどこ」と「こころいき」で、「ねどこ」は
土は だんまりや いやだとはいわない
から始まります。絵本の最後を飾る「こころいき」は、
きえる 星のきらめきを ひしひしとかんじとってなのだ ちからいっぱい 鳥たちが なきかわして せいいっぱい 花また花が さきそろうのは
とあります。
「ねどこ」と「こころいき」というふたつの詩が合体して、別の要素も加えて、新しい「こころいき」という詩ができたのではないか、と私は推測しています。 ひとつの詩の種が、いくつかの詩になり、いくつかの歌となって、とびちって、種から種へとうたいあう姿。「うた」というものの根っこを語っている詩だと思います。 (萩京子)
萩京子
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