1. 契 (1’20”) 2. 鮎 (5’00”) 3. 空をかついで (5’40”)〔Vocalise含む〕 ---------- 熊本県立第一高等学校合唱団委嘱作品。2019年3月29日、同合唱団の第38回定期演奏会にて全曲初演。序奏的な「契」、命のドラマを紡ぐ「鮎」、インテルメッツォ的な「Vocalise」から始まり、そのまま再び命のドラマが描かれた「空をかついで」と繋がっていく。女声合唱団の澄み渡るような声にとても合う作品で、またピアノの美しい響きも際立っている。全3曲。 グレード:中級 演奏時間:約12分 <まえがき> 『私たち人間、誰もが生まれた瞬間からたった一つ約束されていること…それは死です。』 平成11年度のNHK 全国学校音楽コンクール高等学校の部課題曲「この世の中にある」の作詩者であった石垣りんさんが、全国コンクールの会場NHK ホールで生放送を通して語られていた言葉が、今でも忘れられない。あの詩の中に出てくる“たった一つの結び目”とは一体何なのか…という問いに対して詩人から(しかもとても穏やかなトーンで)発せられた言葉に、会場は静まり返っていた―。 以来、石垣りんさんの詩の世界観に引き込まれ、いつか音を紡ぎたいと思いながら約20年の歳月が流れ…そして何かが満ち溢れてくるようにいくつかの詩に音楽の律動を感じ始め、この組曲を作曲するに至った。序奏的で神秘的な「契」にはじまり、命のドラマを描いていく「鮎」、移行句・インテルメッツォ的な役割を孕むVocalise を経て奏される終曲「空をかついで」は、彼女の代表詩によるもので、やはり命への言葉が紡がれていく。熊本第一高等学校合唱団2018年度委嘱作品であり、この合唱団の持つ美しい透明感・澄み渡ったトーンは詩の世界観とも重なり、作曲イメージの大きな源泉となった。2016年の熊本地震に際し、この伝統ある合唱団も活動の危機に直面したようであるが、それを乗り越えてきたメンバーにより奏でられた命のドラマは光に包まれ、清流の如く美しいものであった。 この作品を作曲する機をつくってくださり素晴らしい命を吹き込んでくださった熊本県立第一高校合唱団の皆様、そしてこの楽譜を手に取ってくださったお一人お一人に、心より御礼申し上げます。(三宅悠太)
三宅悠太
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