1. おおきな木 (4’00”) 2. 散歩 (3’30”) 3. ひとの歯のバラード (1’45”) 4. 嘘のバラード (1’55”) 5. ひつようなもののバラード (2’00”) ---------- 2018年6月23日、合唱団エトワーユ・駒澤大学合唱団第20回ジョイントコンサートにて委嘱初演。爽やかな曲から始まり、変拍子による不思議な空間を醸し出した曲、詩だけでも笑ってしまう曲、男女の掛け合いが面白い曲、最後は何かを考えさせられたり…曲ごとにいろいろな味わいがあり、飽きの来ない合唱曲。どの世代の合唱団でも楽しめる。全5曲。 グレード:中級 演奏時間:約13分10秒 <まえがき> 長田 弘さんの自選詩集であるハルキ文庫の「長田 弘詩集」から5つの詩を選びました。自選の詩! 詩人は数ある自分の詩のなかから何を選ぶのか? 興味があります。私が以前作曲させていただいた「ファーブルさん」も入っていてうれしくなりました。はじめに「おおきな木」が載っていて、あっという間に引きつけられ、合唱曲全体のタイトルを「おおきな木」にしました。 長田 弘さんの詩は、やさしい語り口のようでいて、とてもきびしく鋭いので、作曲をはじめてから、のたうち回ることになります。 『おおきな木』 私はおおきな木と出会うと、長い時間を感じます。詩の流れに沿って、いろいろな記憶の断片がよぎっていく、そんな歌になれば、と思いました。 『散歩』 歩くことを楽しむために歩くこと。なかなかできないなあ、と思いながら、散歩に憧れつつ作曲しました。「いちばん難しいのは、いちばん簡単なこと。」そのとおりだ、と思います。 続く三曲は「バラード」と名がついた3つの詩。 『ひとの歯のバラード』 「われら、きみの口のなかに住む 三十二頭の白い馬。」という出だしが魅力的で、この詩をつい好きになってしまったのですが、人間に向かって挑発的な物言いをする白い馬に、最後はぐさっとやられてしまうような感覚。でもさらによく考えると、これは「歯」の孤独を語っているような気もしてきました。人が死んでも歯は残る。そこに悲しさと孤独を感じます。 『嘘のバラード』 こんにちの日本。この詩がいよいよ現実味を帯びてしまって……。「嘘は嘘、嘘じゃない。ほんとに嘘だ。」と来れば、頭の中はクルクルしてしまいますが、詩人の語る最後のフレーズ、「本当でも嘘でもないことを ぼくはいうのだ。」という言葉で、気持ちをしゃんとさせたいです。 『ひつようなもののバラード』。「ひつようなものは わずかなもの。」私にとってひつような大切な言葉。詩人の書いた「言葉。白い紙に 黒い文字。」は、私のような作曲家にとっては「音。白い紙に 黒い音符」でしょうか?(萩 京子)
萩京子
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