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51903026 混声合唱とピアノのための「ぼくの村は戦場だった」 −あるジャーナリストの記録− 楽譜 混声合唱とピアノのための「ぼくの村は戦場だった」 −あるジャーナリストの記録−
[カワイ出版]

(在庫1冊)

2,200円

1. カメラとペン  (4’30”)
2. 111000000  (5’00”)
3. ぼくは兵士だった(5’30”)
4. ねがい     (2’10”)
5. もし、ぼくが  (4’30”)
6. 目を凝らし、耳を澄ませば(4’20”)
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テノール独唱のために2014年に発表した作品がオリジナル。 ジャーナリスト・山本美香氏の著作をもとにし、個の眼を通した世界を描くというのが本作のコンセプトではあるが、合唱で歌われることによって、世界中のジャーナリスト(あるいは無数の市民)の眼から見た同時多発的な「今」を描くという広がりが生まれるのではないかと作曲者は考えている。
コンクールなどでも歌えるように2?4楽章の短縮版で歌うことができる。
グレード:中級
演奏時間:約26分

<まえがき>
 本書はテノールのために作曲された独唱曲をオリジナルとする合唱編曲版です。以下、独唱版の出版譜(『信長貴富歌曲集2』カワイ出版刊)の解説から引用します。
 本作はテノールの清水雅彦氏の委嘱により作曲されたものである。2012年8月、日本人ジャーナリストが取材中にシリアで銃撃に斃れたという衝撃の打電から1年半後の2014年1月に初演された。
 歌も一つのメディアであると捉えたとき、作曲という作業にも或る種のリスクが伴っていることを、作り手は自覚しなければならない。何かを伝えるということは、背後に膨大な「伝えないこと、伝えられないこと」があるからだ。ジャーナリズム論的にいえばそれは編集のリスクということになるだろう。メディアが「マス」であればあるほど、編集権は絶大な力を持ち得る。それは権力を監視する力となって市民の声を代弁する働きをすることもあれば、権力と一体となって世論を誤った方向に誘導することもある。歴史を振り返るまでもなく、現在の日本のマス・メディアが何を伝え、何を伝えていないか注意深く観察していれば、自ずと編集のリスクについて自覚することになるだろう。
 清水雅彦氏からジャーナリスト・山本美香さんの著作をもとにした声楽作品を、とのご提案をいただいたとき、最初に課題と感じたのが編集のリスクについてだった。山本美香さんの残した仕事のどこを切り取るか、切り取らないか、結局は私の主義主張のフィルターを通過させなければならない。山本さんご自身も著作の中でマス・メディアへの自己批判も含めて編集リスクについて言及されているから、私も彼女のこころざしにならって、編集の罪に自覚的であろうと誓いつつ作業を進めた。
 作曲にあたって山本美香さんが取り組まれていた活動の中から、戦場にいる子どもたちへの取材に焦点を当てることにした。山本さんが都留文科大学のご出身であるという「つながり」の中に、現在同大学で教鞭を執る清水氏の思いの深まりがあったことを私なりに関連付けて、教育……子どもたちへのまなざし……という観点を作品の背景に置こうと考えたのである。戦争で心に傷を負った子どもたちへの教育、また戦争を遠い国の出来事としてしか認知していない子どもたちへの教育の必要性については、山本さんが著作の中でも多くの頁を割いていらっしゃることだ。
 テキストは、山本さんの三つの著作『ぼくの村は戦場だった。』(マガジンハウス)、『戦争を取材する』(講談社)、『中継されなかったバグダッド』(小学館)から抜粋した上で、舞台用の言葉として私が編集したものを中心に構成している。このほかに、参考文献として『山本美香最終講義 ザ・ミッション』(早稲田大学出版部)を参照した。第三章の子ども兵の描写の部分では『子ども兵の戦争』(P.W.シンガー著、小林由香利訳、NHK出版)を参考にしている。また、子どもたちの肉声を作品に挿入したいとの考えから、第四章と第五章では『目をとじれば平和が見える 旧ユーゴスラビアの子どもたちが描く戦争』(ユニセフ編、ぽるぷ出版)と、『チャンスがあれば… ストリートチルドレンの夢』(「チャンスの会」編・訳、岩崎書店)を参照した。これら三冊の文献は山本さんの仕事とは直接の関係はないが、彼女が私に与えてくれた子どもと戦争に関する視座を敷衍する役割を持つことになったと思う。
 山本さんの著作を読み進めるにつれ、ご自身のことについてセンセーショナルな伝え方をされることは彼女の望むところではないのだという認識が確かなものになり、2012年のシリアでの事件については本作では触れなかった。一方、死と隣り合わせにいることの緊張感や、それでも誰かが伝えなければという使命感を示す言葉は組み入れている。
 私が古書でたまたま手にした『中継されなかったバグダッド』の扉に彼女の直筆サインがあった。そこには「見なきゃ はじまらない」という力強いメッセージが書かれていた。山本さんがまだ生きていらしたら、いまの内外の情勢をどのように伝えていただろうか。日本のジャーナリズムの悲観すべき現実の中で、山本美香さんの不在は非常に大きな空洞のように思えてならない。
 合唱版は2017年から2018年にかけて清水雅彦先生の指揮する都留文科大学合唱団のために制作されました。独唱版が初演された当初から、この曲集は合唱版の可能性があると感じていました。山本美香さんの著作をもとにし、個の眼を通した世界を描くというのが本作のコンセプトでしたが、合唱で歌われることによって、世界中のジャーナリスト(あるいは無数の市民)の眼から見た同時多発的な「今」を描くという広がりが生まれるのではないかと考えながら編曲を進めました。山本美香さんの出身大学である都留文科大学の若者たちによって合唱版初演が実現できたことは、作品に大きな意味を与えてくださったように思います。各位に心から感謝申し上げます。
 なお合唱版制作に当たっては、全曲初演に先立って全日本合唱コンクールで第二・三・四章が抜粋・短縮版の形で初演されました。時間制限のある場で演奏される際のご参考にしていただければと思いますが、可能であれば全曲に触れていただく機会をお持ちいただきたいと願っています。(信長貴富)

信長貴富
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