1. 角を吹け (4’50"") 2. 陰影の瞳 (4’00"") 3. 月の出 (5’40"") --------- 2015年度朝日作曲賞受賞作品。 ポップス系の演奏家としての活動のかたわら、本格的に書いたオリジナル合唱作品。“合唱組曲” というものに対する憧れや理想を具現化しようと考えを巡らせて書いたもの。疾走感がポイントの1曲目、一転して複雑な曲調の2曲目、ロマンチックな印象の3曲目とそれぞれタイプの違う曲だが、複数のモチーフが各楽章に共通して現れ全体の統一が図られる形式を用い、一続きの曲のような印象を強める効果を狙った。全3曲。 グレード:中級 演奏時間:約14分30秒 <まえがき> 何年前だったか失念しましたが、何かの打ち上げである合唱指揮者の先生の隣に座らせていただく機会があったことを覚えています。当時私はポップスのミュージシャン業を中心に生活しており、合唱に仕事として関わることはごくわずか。ポップス曲の混声合唱アレンジは何曲かしていたと思いますが、作曲は「いつかできたらいいな」という状態で、大学で作曲を勉強していたこともあって漠然と作曲を仕事にしたいと思っていたわりに、なんとなく演奏活動を優先するようになってしまっていました。─というようなことをお酒を飲みながらその先生にお話ししたところ、「作曲家なのに曲がないのかあ」と痛烈すぎるコメントをいただいてしまいました。 いま思えば、これが『印象』を書き始めることを決意した瞬間でした。 決意はしたもののやはり演奏中心の生活から作曲は進まず、実際に完成させることを意識したのは2014年。朝日作曲賞という合唱作品のコンクールがあることを風の噂に聞いて(本当に合唱業界のことは無知でした)、とりあえずそれを目指して作曲をしようと決めたのでした。ちょうどミュージシャン業に限界のようなものが見えてきた時期でした。その後、無事に書きあがった『印象』は朝日作曲賞を受賞。1曲目の『角を吹け』はコンクール課題曲として多くの合唱団の皆さんに歌っていただきました。本当にありがたいことです。現在作曲を仕事にしている私の、まさにターニングポイントになった作品だと思います。 今回の出版に際し、すでに課題曲として出版された『角を吹け』を含む全曲を少し手直ししましたが、3曲がattacca で連続して演奏される姿は変わっていません。『角を吹け』で興味を持ってくださった方も、組曲として全体を演奏してなにか感じていただければ、これほど嬉しいことはありません。(市原俊明)
市原俊明
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