1.まんてんのほし (2’30”) 2.あしたといういみ (3’10”) 3.たすけてほしいときに (3’30”) 4.せかいのなかで (3’20”) ---------- 脳性麻痺で寝たきりの詩人が日常から受ける様々な思いを、同じ女性ならではの視点で捉え、言葉を大事にしたメロディと気持ちの移ろいを感じる和声を用いて表現した作品。 グレード:中級 演奏時間:約12分30秒 <まえがき> 2015年4月、何気なく手に取った新聞の一面に目が止まりました。そこには「声なき詩 命の証し」のタイトル。脳性まひのため寝たきりの生活を続けながら、「心をかいほうするためのしゅだん」としてわずかに動く指先で詩を紡ぐ、二十歳(当時)の詩人・堀江菜穂子さんの記事が載っていました。 私は、菜穂子さんの奥底から湧き上がる、まさに魂そのもののような言葉に衝撃を受け、心を掴まれました。そして、菜穂子さんの言葉を音楽にしたい、より多くの人に伝えたい、と直感的に強く思いました。 その後、菜穂子さんとご両親にも了承を得て、詩集〈さくらのこえ〉の中から4篇の詩に曲を付け、組曲にしました。最初に新聞で読んだ「せかいのなかで」が終曲となっています。 『まんてんのほし』というタイトルは、一見するとキラキラした美しい画が思い浮かびますが、この作品では決してポジティブな意味だけで描かれているわけではありません。1曲目「まんてんのほし」、2曲目「あしたといういみ」、3曲目「たすけてほしいときに」では、菜穂子さんの心の中の葛藤や苦しみ、苛立ち、寂しさ、少しの諦め、そしてなお信じる希望…さまざまな感情が見え隠れします。その複雑な心の動きを経て、4曲目「せかいのなかで」では自分への決意、前を向いて歩んでいく宣誓のような意志の強さを感じます。もちろん、菜穂子さんにしかわからない、計り知れない想いがあると思われますが、私なりの音楽表現として、一語一語を大切にこの組曲を書きました。4曲すべてを聴き終わったとき、改めて『まんてんのほし』というタイトルの奥にある真意がふっと腑に落ちるような、“すべての人への讃歌だ”と思えるような作品になればと願っています。(名田綾子)
名田綾子
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