For The Good Times (6’30”) ---------- 複数の作曲家で一つの組曲を作るというアイディアのもと出来た混声合唱作品「四つのディベロップメント」の第4曲目。まとめの曲として、他の作品全てを大きく包みこんでいくような暖かい作品。 グレード:中級 演奏時間:約6分30秒 <まえがき> 「4人の作曲家による連作組曲」というこれまでにないスタイルの作品。その終曲を書くことで、企画を提案した旗振り役としての責任をここに全うする次第です。 「平和って何?」「文明とは何だ。」と問いかける前半2曲。「生の自由は存在なんだと。」と肯定する第3曲。それらを受け止めて、前の3曲に書かれていないことと自分の音楽とのギャップを埋めていくことで、書くべきものが「答え」となって示されたように思えます。長田弘の詩は息づかいが独特で、とりわけ「A」や「O」といった母音の響きが印象に残ることが多かったので、作曲のうえでもその感触に忠実なフォルム作りを心がけたつもりです。組曲の終曲として、4曲をまとめる役割を意識しながらも骨太な音楽が流れていく中、いたるところから前3曲の断片を聴くことができます。 委嘱団体である合唱団わをんには創団当初から様々なかたちで携わってきました。他の合唱団と違って、この団体は演奏機会ごとにメンバーを集め、本番が終わるたびに解団、という流れを繰り返しています。その積み上げてきたことが、テキストの最後にある「『終わり』がわたしたちの/世界の一日が、明日はじまるところ。」という一節と重なったのもこのテキストを選んだ大きな要因であり、それはまた、組曲の最後の音が鳴り終わった瞬間に、聴く人が客席にふっと戻ってくることができるような音楽を…という作曲者の思いとも密かにリンクするのでした。(田中達也)
田中達也
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