モサラベ聖歌とモロッコのサマア集
※録音:2019年10月 ---------- ペレスとアンサンブル・オルガヌムが20年以上あたため探求し続けたプロジェクトがついに録音のはこびとなりました。1997年、ペレスは、モサラベ聖歌(アラブ支配下にあったスペインのキリスト教徒の聖歌)とモロッコのサマア(イスラムのスーフィーが取り入れた、音楽を聴くこと)の精神修養を並行して探求し始めました。この2つの宗教の違いはさておき、ペレスたちは2つの音楽表現の間に多くの親近性を見出しました。音楽を通して、失われつつある人類の兄弟愛を取り戻そうという、まさにユートピアのような発想が生まれました。登盤では、ディスク冒頭で「愛がすべてを救う」という内容の詠唱が聞かれたのち、モサラベの典礼の冒頭で歌われる聖歌、そしてイスラム教でスーフィーの祈りをささげる儀式をしている人に呼びかける音楽が続く、という、まさにキリスト教とイスラム教の音楽が入り混じったかたちで構成されておりますが、古今東西を問わず、人間が平和と平安を希求する気持ちはみな同じであることをあらためて感じる内容となっています。と同時に、ペレスらの研究と資料読解の労苦、そして様々な音楽を演奏する能力にも敬意を表したくなる1枚です。マルセル・ペレスは1956年アルジェリア生まれのフランスの指揮者。1982年に中世音楽を演奏する「アンサンブル・オルガヌム」を結成。作曲当時の手法で演奏する古楽奏法により、各地に残る聖歌などの宗教音楽を演奏しています。
マルセル・ペレス(指揮)アンサンブル・オルガヌム/Ensemble Organum, Marcel Peres
|