(1) 「ル・イ・グラーブ(薔薇の魂)」(2006)〜混声合唱、エジプト・マディ・アンサンブルと10のボウル・ベルのための5部からなるモデム [45:36] (2) 「私のヴェニス」(2009)〜混声合唱、ボウル・ベル、オカリナとパイプのためのモデム [14:40]
※録音:(1)2008年6月、(2)2009年4-5月 ---------- ルペルト・フーバーはオーストリア出身の作曲家、指揮者。作曲家としてはサティ、ケージ、フェルドマンの影響を受けることから創作を始め、やがて非西欧の音楽に関心を持つようになった。そして東ネパールのシャーマン(巫女、呪術師)のヒーリングの歌唱から強い影響を受けて自身の音楽の方向性を確立したという。パフォーミング・アーティストとしては古典派からロマン派、現代音楽まで幅広いレパートリーを持ち、アンサンブル・モデルン、クラングフォルム・ウィーン、WDR響、SWR響などに客演する「普通の」指揮者の一面もあるのだが、自作は一転して妖しい(怪しい?) 似非民族音楽、瞑想音楽に終始する。《薔薇の魂》は13世紀ペルシャの詩人ディン・ルミの詩をフリードリヒ・リュッケルトがドイツ語訳したものをテキストとした大作カンタータ。エジプトの民族音楽アンサンブルと混声合唱とボウル・ベルのために書かれており、抹香か焚くかハッパ(!) でも吸いながら聴いたらトリップしそうな神秘的な雰囲気に満ちている。《私のヴェニス》は歌手たちの吐息やテキストにある詩の子音(シーとかシュ、シャーといった音)が徹底して素材として使われ谷間を吹く風のような効果を生む。そんな中、時折、うめき声やオカリナの奇妙な音が聴こえるといったいささかインチキ臭いながらも怪奇趣味の雰囲気が面白く、大変好感が持てる。デイヴィッド・ハイクスやペーター・ミヒャエル・ハメルなど瞑想、ヒーリング系の神秘的な音楽が好きな人にお薦め。
ルペルト・フーバー(指揮)、バイエルン放送合唱団、(1)マディ・アンサンブル、(1)ドリス・フーバー(ボウル・ベル)
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