このCDには、ここ二十数年間に書いた独奏曲と独唱曲が収められています。この間私は女子大学で教職に就いており、それが作曲に一定の影響を及ぼしているようです。
収録作品には女性を聴き手として、あるいは演奏者として意識し、作曲したものがあります。私は学生に接しながらその感性について考え、いつしか彼女たちを“想定聴衆”とした曲を書いていたのかもしれません。それが作曲家として幸いだったのかどうか、分かりません。でもいま私は、教師として出会った多くの学生たちに感謝と懐かしさを覚えます。
めざしたのは、たおやかな響きです。願わくはみなさまの御心を優しく震わせますことを。

東京藝術大学音楽学部卒業、同大学院修士課程修了。修了作品大学買い上げ。第34回グイド・ダレッツォ国際作曲コンコルソ、第16回奏楽堂日本歌曲作曲コンクール、第17回朝日作曲賞、第10回神奈川芸術祭合唱コンクール入賞・入選。和歌山県文化奨励賞。
大学院修了作品《三つの沖縄の歌》で創作発表活動を開始。沖縄民謡に取材した《宮古島の二つの歌謡》や、《ハッシャバイ・ソングス》《わらべうたのカタログ》等数多くの合唱曲も発表。ピアノのための《Code for Flowers》無伴奏チェロのための《弦歌三章》などの器楽曲も国内外でしばしば再演されている。そして民俗素材と現代詩歌への作曲という声楽創作の方向性は東京混声合唱団委嘱《愛のうた 恋のうた》で一つの結実を見、さらにそれらの集大成としてHi's Opera Company 委嘱の《オペラみすゞ》を完成。新国立劇場で初演された同作は好評を博し、音楽誌上でも高い評価を得た。NHK学校音楽コンクール、全日本合唱コンクール、おかあさんコーラス大会などコンクールほか和歌山市児童生徒文化奨励賞などの審査員を務める。現在、神戸女学院大学音楽学部教授。

主要作品：オペラ《みすゞ》。合唱曲《沖縄わらべうた》、《紀州うた拍子》（カワイ出版）、《紀伊のこどものうた遊び》、《紀伊の国のうた拍子》、《南ぬ組歌》、《ナッチロリン》、《季節よ、城よ…》、《タプカル・キ・キ》、《魔法のコトバ》。独唱曲として《宮古島の二つの歌謡》(CD カメラータ・トウキョウ)ほか。器楽曲ではピアノのための《Edge on Colors》、オンド・マルトノ五重奏曲《田園詩》、フルートのための《Monody Canticles》、コントラバスとピアノのための《チュプ・チルキの呪文》、ハープのための《巴》ほか。